松山市は、市花として昭和47年4月1日に「つばき」を選びました。日本原産のこの花は全国いたるところに咲きますが、理由は法興6(596)年聖徳太子が道後に行啓され、これを記念して、伊佐爾波岡に立てられたという温泉の碑によるもので、この文章は「伊予国風土記」逸文のなかにも載せられ、我が国最古の金石文として重要なものです。その碑文中「温泉の周囲には椿の樹が茂って温泉を取り囲み、その壮観なことは、実にたくさんのキヌガサをさしかけたようにみえる」という意味の句があり、当時、温泉の周囲には、椿の木が繁茂し、鳥がさえずり、仙境の観を呈していたことがうかがえます。この碑文の由来から「つばき=ヤブツバキ」が選定されました。
松山市教育委員会発行「伊予路の文化」